科学の仮説と実証 / 芸術の抽象と成果


(図: 酵素構造を抽象化したリボン図)

 もともと人文、あるいはアート畑から来ているせいか、科学がもたらす「人智を超えた」図像に圧倒される。そういうものを発見したときブックマークしたりPCの壁紙にしようとしている自分がいる。

 上記はWired JAPANの記事を翻訳しているとき、「酵素」について調べ、そのタイミングでみつけた図だ。曰く「核酸塩基代謝に関与するプリンヌクレオシドフォスフォリラーゼの構造(リボン図)」。これに続く解説には、「研究者は基質特異性を考察するときに酵素構造を抽象化したリボン図を利用する。」とある。ボクはここでハッ、と思わされることがあった。

 科学は抽象的な概念をしてまず仮説を立てる。だけど芸術は概念が抽象的なままでいいのだ。抽象が成果である。ただし科学は抽象が成果ではない。実証が伴う。芸術には実証という考え方がない。科学が「仮説」「実証」というベクトルで回り続ける限り、芸術はいつまでたってもおいてきぼり食わされてるような気がするんじゃないか。

 でもちょっと立ち止まって考えてみると、科学はそんな芸術の「いちいち証明しなくていいんだよ。美しければいいのさ」っていうような、直感で開き直っているところが羨ましいかもしれないな。

 そんなことを考えた。

 まあ、そんな話しは一瞬横においておいて、科学がもたらした一種「人智を超えた」と思わされるような、抽象芸術たちをここで思いつくままにとりあげてみよう。

 まずはNASAが撮影した金星の写真。NASAの写真はいつも驚くほど、高画質。それと公開してるものに関していえば、大抵オープンソース。



 次にボクの大好きな、月の地質地図。配色が素晴らしい。色は多分、月面の高低差を表している。


 これに至ってはジャクソン・ポロックのアクション・ペインティングと何ら変わりない。隕石が月に衝突して作り上げた惑星キャンバスととらえれば実際抽象表現主義といえるかもしれない。

 最後はone more thingってなもんでAppleの最近(2015.12.)のCMから。映像は自然科学だが、音楽はサウンド・アコースティックが冴えてるアンプラッグド・ミュージックである。(音楽はAlabama Shakes



(個人Tumblrブログ『Me, Myself &Eye』から転用しています)