<ある人の所在 / 地図にアイデンティティを刻む / 個展カタログ英訳>
アーティスト谷山恭子さん(→◎)の作品、One’s Ubiety展のカタログ英訳をさせて頂きました。
谷山恭子さんの作品は地図を使用し、そこから想起されるさまざまな思い出や心の在り処をマップで辿ろうとするものです。
Google MapやI Phoneの位置情報の登場により地図は今、われわれの場所性を少しずつ変えています。
もともと地図はエリザベス朝大英帝国において劇的に進化を遂げました。それまでたんに主観的な隣町から隣町へと移動する目の前の景色をあらわす「絵」に過ぎなかった地図がミニチュア化され、上空から二本足のコンパスで計測、度量される普遍的な科学へと変化した。
(図: 16世紀イギリスの地球儀)
それはガリレオがはじめて、当時の簡易的な望遠鏡でスケッチした月、
(図: ガリレオが残した月のスケッチ)
そして2015年7月にNASAが接近した冥王星の衛生画像へと通じています。
(図: 無人衛生New Horizonが撮影した冥王星)
今回の展覧会では、空間的な発想を個人の記憶となぞらえ、9つの個人的な思い出を頼りに、その人にとって最も大切な場所を本人の回想談とともに再現しています。
そして再現された「地図」は一人一人の「所在=Ubiety」をうつし出すものとなっています。
私が英訳作業で終始こころがけたのは、作品の当事者の「声」を届ける、といったものでした。
そもそも、私は翻訳をする際、別言語のフィルターになるようなテキストの「下敷き」をいろんなところから探すことに大変労力を使ってしまう。
このカタログの「下敷き」として私が使用したのは、
BBC World Service、Outlook(→◎)にあるような、インタビュー・シリーズの吹き替え英語の口調。それがまず一つ。
それから、人の声・トーン・口調・間が上手く活かされるよう、現在気になっているアメリカン・ポエトリーの女流詩人、Jane Hirshfieldの朗読を聞き取り入れてみました。(→◎)。
Jane Hirshfieldは今注目の詩人・エッセイスト。彼女のポエトリー・リーディングを聞くと詩の意味と音が浮遊し、揺れるのが感じられる。詩の中で言葉が動き回る。そして彼女の朗読は言葉を直立させ、時にクレシェントさせるような特色をもっている。
最後に、原文をなるべく崩さず、字句通りに訳すということをこころがけた。
これがなかなか難しい。最後には言葉が並ぶ順序とその優先順位に意図と意味がある、ということをなるべく意識した。これが今回の大収穫。改めて痛感しました。
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『谷山恭子個展 – One’s Ubiety ある人の所在 vol.3』は以下の会場、会期で開催されます。ご興味ある方はぜひ足をお運びください。
会 期:2015年9月23日(水・祝) – 10月4日(日)
会 場: UTRECHT/NOW IDeA 東京都渋谷区神宮前5-36-6ケーリーマンション2C
時 間:12:00 – 20:00
オープニングレセプション 9月23日(水・祝)18:00
鑑 賞:無料
定休日:月曜日(祝日の場合翌火曜日)
会期中ワークショップを開催します。(刻印のワークショップ)
開催日=9月23日(水・祝)・25日(金)・26日(土)・27日(日)・10月2日(金)・3日(土)・4日(日)
開催時間=14:00-20:00(谷山在廊)






